普通科高校での英語授業

OLYMPUS DIGITAL CAMERABy 吉田雅子(愛知県立中村高等学校)

 

多くの英語教育関係者がご存知のように、高等学校では2013年度から新指導要領に則った英語授業を実施しています。科目名は、「コミュニケーション英語Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」「英語表現Ⅰ、Ⅱ」となり、4技能を総合的に育成する活動を取り入れ、原則的に英語で授業することになりました。 私が勤務する全日制普通科の、いろいろな意味で本当にフツーの学校で、英語授業をどのように行っているかについてお伝えします。

 

  1.   英語で授業するための学年共通のワークシート

英語で授業を行い、「生徒が英語を使う機会をできるだけ多く与えること」を授業のねらいとする場合、どのような授業をしていったらよいかから考えなくてはいけません。なぜなら、教員自身がそのような授業を高校時代に受けたことがないからです。ひょっとしたら大学ででも経験していないかもしれません。従来の訳読式授業、生徒に単語に意味などを予測させる予習を期待し、授業では英文和訳を行う形式では、英語で授業は不可能です。 授業でどのような力をつけたいのか、その目標を明確にするために、ワークシートを作成します。多くの場合、1学年の同じ科目の授業を複数の教員が担当することになるので、学年共通の目標が必要です。

たとえばリーディングの場合、プレ・リーディング→ホワイル・リーディング→ポスト・リーディングの流れに沿ったワークシートを考えます。スキーマの活性化のためのウオームアップ活動から始まり、語いの提示、全体を通した概要をつかむための活動、パートごとでの内容把握、既習した表現を使ってのオリジナルの英作文、そして内容に関して自分の経験や考えを簡単に述べ、クラスメートとそれを共有する活動へと進んでいけるように作成します。最後に、読んだテーマに関連した内容でのライティング、好きな場面を選んでの、または全体を通してのリテリングなどをポスト・リーディング活動として取り入れます。それを発表させ、生徒同士がお互いに聞き合ったり、作品を読み合ったりすることで活動は広がります。せっかく英語で読んだことがらについて、心の中に何が残ったかを確認することは生徒にとって大切なことだと思います。

この授業を成功させるために最も重要なのは、教員の共通理解です。ワークシート作成は一人、もしくは複数で順番に担当することになりますが、作成者の意図を理解し、授業でつけさせたい力を確認し、生徒の取り組みを予想します。ただ実際の授業では、様々な化学反応が起こったり、予測不可能なことがらが多く生じます。生徒の反応、理解度などについて良い点、悪い点を含め、情報を教員同士で共有し、授業内容やワークシートに少しずつ修正を加えながら授業を進めていけるかどうかが、この授業の成功の大きな鍵となります。

 

2.   評価

4技能の力をつけるための授業をするのであれば、それぞれについて評価する必要があります。従来の定期テストだけでの評価ではなく、授業で取り組んだことが反映される評価が必要でしょう。新しい授業での評価をどのようにしていくかは、おそらく多くの高校が直面している大きな課題であると思われます。 具体的には、ライティングとスピーキングについてです。ライティングについては、ポスト・リーディングとして書いた作文や、「英語表現」でのライティング作品を評価の対象にします。またスピーキングについては、インタビュー形式の会話をペアワークで発表するものや、一人ずつのスピーチを評価します。評価基準(クライテリア)を作成し、教員が共通理解し、共有する必要があります。

 

3.   新しい取り組み

これから取り入れたい活動は、「多読」です。英語を読むことの面白さを、ぜひ生徒に体験させたいと考えています。高校1年生での多読の導入として、マクミランリーダーズの「Sara Says No!」を43冊そろえました。クラスで全員がその本を持ち、CDの英語音声で生徒を引っ張りながら、一緒に読んでいきます。初めて経験する生徒も安心感を持って読んでいけると思います。それから、とても易しいレベルの読んでみたい本を自分で選び、読み進めていきます。読んだものについては、記録をつけさせます。生徒同士で読んだ本を紹介しあうグループワークなども面白そうです。最大の難問は資金調達です。授業として継続していくためには、少なくとも学年全員分の冊数が必要ですが、全く足りていないのが現状です。公立高校の抱える問題です。

 

4.   教員のチームワーク力

生徒のコミュニケーション能力をのばすための授業を実現させるためには、まず教員間での共通理解が必要です。教員がコミュニケーション力を持ち、情報を共有し、協働して授業に臨むことが求められます。もしかしたら、新しい英語授業でコミュニケーション力をつけることができるようになっているのは、教員なのかもしれません。   高校の教室現場では、設備面、資金面で多くの問題を抱えています。限られた、制約のある環境の中で、生徒に英語の力をつけるために何ができるか毎日が試行錯誤です。「これさえやればよい。」という正解のような方法がないなか、よりよい英語授業をめざして前に進むしかありません。自らが外国語学習者であり、生涯学習者であり続けながら、これからも英語授業にジタバタと取り組み続けるでしょう。