日本の学生、捨てたもんじゃない

峯先生峯慎一 (明治大学経営学部非常勤英語講師)

現在、私は明治大学経営学部で英語の非常勤講師をしています。人生の3分の1を英語とスペイン語圏ですごし、米国の小学校、高校そして大学で日本語とコンピュータプログラミングを教えて来ました。また、縁あって10年ほど、ジャーナリストとして米国から同国のコンピュータと教育に関する記事を日本の月刊誌に連載。3人の子どもたちも米国の大学をでて、永住権も取得していたため、帰国すること、ましてや日本の大学で教壇に立つというオプションは考えてもいませんでした。

最大の理由は、来訪される日本の大学教授たちから、「大学受験で疲れはてて入学した日本の大学生は勉強しません」と異口同音に耳にタコができるほど聞かされていたからです。 そんな訳で、みんなのぼやきを頭から信じて、「日本の大学で教えることはないだろう」と思い込んでいたのです。

ところが、あるきっかけで、明治大学の経営学部で英語を教えることになったのですが、教え始めてあることに気づきました。日本の学生は

1_中、高では入試用の英語がメインなため、英会話の練習をしたことがない。

2_分からないとき積極的に質問をしない。

3_「知っている人は?」という質問に知っていても、手を挙げない。

これではグローバル人材は育たない。そこで、学生たちに自信と度胸をつけさせるため、ある課題を課すことによって意識変化を導くことができたのです。その課題とは……。

「外国からの旅行者たちに英語で話しかける作戦」。

これをFinal Interview Project (FIP)と称して、期末テスト代わりに8年ほど前から学生たちにさせてきました。 FIPは諸外国からの旅行者を相手に、国、名前、旅行の目的、日本の印象など英語で7つの必要事項を尋ね、実行した証拠にその旅行者との証拠写真を撮って、感想文と質問項目の英語回答を私にメールするというものです。冬休み前、が恒例でしたが、今年はちょっとした思惑もあって、夏休み前に実行。結論からいうと、入学して数ヶ月というまさしくフレッシュマンでも、両脚と唇をふるわせ、鼓動が普段の何倍になりながらも、実に見事に皆インタビューを成功させ、思惑が外れることなく、学生たちの意識に変化があったようです。

まず、クラスメートたちと互いに外国人旅行者と質問者になりきって、英語によるインタビューの練習を授業中にします。注意事項もあります。クラスメートとペアになっていくこと。同じ旅行者をペアでインタビューしないこと。六本木は避けること。食事に誘われても一人ではいかないこと、などです。 旅行者たちが行きそうな場所を自分たちで考え、インタビュー相手3人または3組といっしょに「相棒」に自分の携帯で撮ってもらうこと。それを私にインタビューのアンケート結果と感想文を送ること。もし感想文が英文なら全体点にプラス5点。これが前半期に行われる2回のテスト合計に加算されます。

このFIPの結果は学生用に作った私のプライベートなウェブサイトに写真とともに掲載します。一クラス25名なので、各自が3枚の写真を送ってくるわけですが、一クラスで75枚。担当クラス三つで、合計225枚。それらを正月前に整理して、本人や家族全員で見られるようにアップロードするわけです。 そこで、前述の私の思惑です。

実はこのFIPを夏休み前に実行することによって、学生たちに「このままではいけない」という意識改革をさせ、長い夏休み中に英語を勉強する気になってもらうことでした。 「自分の英語力不足を感じた」「英語圏ではない人たちでも英語をしっかり話しているのを知ってショックだった」「はじめは怖かったけれど度胸がついた」「外国人が優しく答えてくれた」「もっと話せるようになりたい」等々、反応は例年と似通ったものでした。が、重要なことは、夏休み前に「夏休み中にもっと英語が話せるようにがんばる」と「英語の必要性」をこれまでよりも早く実感してくれたことです。

このFIPで学生たちが肌で学んだことは

1)完全な英語でなくても思い切って一生懸命話せば相手に通じる

2)英語圏の人でなくても、多くの外国人は英語ができる

3)初対面の人に接する度胸がついた

最後に。これまで1年生の授業では、半分ほど英語で、残りは内容理解を確認する意味で日本語、というパターンでした。しかし、今年から一切日本語を使わなくなったことで、面白い現象が。これまでは、「Good morning!」といいながら教室に入って行ってもパラパラと挨拶がありましたが、すべて英語で授業をするようになって、明るい返事が返ってくるようになりました。

授業中に「Any questions?」と尋ねて質問してくる学生はまだ少ないですが、辛抱強く「失敗を恐れるな」と言い続けているうちに、そんな気になって尋ねてくれるようになるかもしれない。

いずれにしても「日本の学生、捨てたもんじゃない」です。